がん検診・予防の体験文の紹介
平成20度 入賞作品
第1位 『ポジティブで行こう!!』 作者名 脇 七奈江
笑い話のようだけど、子供の頃から肉魚が嫌いで粗食を好んだ。
「癌にならない食事…」などと書かれた本に載っている食事が好物でしたり、癌になれば痩せるという噂も裏切ったり、ほんの一、二年で10㎏も太った。
長年の喫煙もきっぱり止めて飲酒も程々に。ストレスを溜めず、良く笑いよく眠る生活。
それはそれは、健康な毎日を送っていた矢先の事だった。
毎年受けていた主人の会社の家族健診を受けて二週間後。健診センターから連絡があり、胃潰瘍の疑いがあるので、胃カメラの設備のある病院で診察して下さいとの事。
後日、資料が郵送されてきた。中のレントゲンを透かして見ると、素人目にもこれは?と思うカゲなのか?「…」どころではない。ポッカリ穴が開いている。メモ書きに「潰瘍の疑い?」とある。この「?」がすごく気になった。
でも超ポジティブな私は、これが癌なら末期だな。まぁ今まで自由気ままに好きなように生きてきたから、それはそれで人生悔いなしなどと悲観する事もなく、思ったより死に対して気楽な感じがした。
友人に「胃カメラが嫌だ」とか、昔飲んで壮絶な苦痛を味わったので、「飲むくらいなら癌で死んだ方がマシ」とまで言っていたら、胃カメラが上手だという胃腸科を紹介してくれた。彼女が言うには、何も紹介なく大病院に行ってもどの医師が良いのか判らないから、一度個人病院にかかって紹介してもらえば安心して大病院に行けるという。それもそうだと思い、彼女の紹介してくれた胃腸科に行く事にした。
レントゲン写真を見た医師は、すぐに胃カメラの予約を入れてくれた。あの苦痛を思い出しながらも、現実に立たされるとそんな事は言ってられず、二度目の胃カメラを受ける。
医師が上手だったのが幸いで、前回の様な苦痛はなかったが、細胞採取に時間がかかったので少し気になった。
検査後、医師に「良くない物が出来ていて、胃切除をしなければいけない。」という。「至急、細胞検査に出すので結果は主人と聞きにくるように」と告げられた。その瞬間、出た言葉は、「私は大丈夫ですが、主人が大丈夫ではないと思います。」だった。
私は予感していたのもあって動揺もなく「あ、そう。」くらいの感情しかなかったけど、主人には何と言えばショックが少なく済むのか、考えても考えても言葉が見つからない。
私と違いネガティブな彼の事。きっと思い悩むに違いない。高校の同級生同士。過去の経緯やら性格やら何でも知っている間柄。再婚同士でもあったので、今度こそ幸せになりたいと言うより、お互い気楽にありのまま自分らしく過ごせたらと願って、三年間暮らしてきた。無二の親友でもある彼に辛い思いをさせたくない。でも言わなきゃいけない。私なりに悩んで考えた。
私らしく明るく、軽く伝えようとメールにした。「が~ん。癌かも?一緒に来いと言うので会社休んでネ。‘美人薄命’てまさにその通りネ」主人は思ったより強い人だったみたいで、「手術したら治るんだよネ」と結構ポジティブな態度だった。
結果は早期の胃癌で胃の三分の二を切除しなければいけないとの事。
どこの病院でも紹介すると言われたけど、素人の私達には病院を選ぶ事も難しいので、医師のおすすめを聞いてみた。腕も良く、しかも同期で頼みやすいという外科医を紹介してくれた。出来るかぎりの検査を済せていけばスムーズに進むからと、バリウム、CTの検査をして、その資料と紹介状を持って有名病院で診察を受け、1ヶ月後手術をしてもらう事となった。
私は本当に運が良いと思う。まずは毎年健診を受けられた事。良い医師を紹介してくれた友人がいた事。おかげで有名な外科医に手術してもらって10日で退院できた事。経過が良く一年経った今は普通に生活している事。
まだまだ再発の不安はあるけれど、生きれるだけ生きてみようと思う。
気楽にありのままの自分らしく。
主人と共にポジティブに